遺贈について知りたい
遺贈とは
- 遺言者が遺言によって、その財産の全部又は一部を処分することをいいます。
- 遺贈は自由に行うことができますが、遺留分に関する規定に反し遺留分権利者から有効な遺留分減殺請求がなされると、遺留分の規定に反した限度で減殺されることになります。
- 遺贈を受ける人(受遺者)は相続人に限られず、遺贈は相続人以外の第三者に対しても、また、個人でなく法人に対して行うこともできます。
包括遺贈とは
目的物を特定しない遺贈
包括遺贈は、全部包括遺贈と割合的包括遺贈に分けられます。
- 全部包括遺贈とは
全部の財産を一人に遺贈するもので、単独包括遺贈と呼ばれることもあります。
- 割合的包括遺贈とは
Aに全財産の2/3、Bに1/3などと財産全体に対する分数的割合だけを示して目的物を特定しない遺贈をいいます。
包括遺贈を受けた受遺者は、相続人と同じ権利義務を有します
- 包括遺贈では、相続人と同様に積極財産と消極財産の双方を、その割合に応じて承継することになり、その放棄・承認は3ヵ月以内に家庭裁判所に申述することが必要です。
- 第986条 (遺贈の放棄)
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
- 上記の規定は特定遺贈について定めた規定であり、包括遺贈には適用されないと解されています。
特定遺贈とは
特定の財産の遺贈
- 特定遺贈とは「X不動産をAに、金1000万円をBに遺贈する」というように、遺言により特定の財産を贈与することをいいます。
- 特定遺贈の場合には、受遺者は積極財産のみを取得することになり、遺言者の死亡後はいつでも遺贈の放棄をすることができます。
遺贈の承認、放棄
- 受遺者が承認または、放棄をしないときは、遺贈義務者、その他の利害関係人は相当の期間を定め、期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨を受遺者に催告することができます。
- その期間内に受遺者が意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます。
- 受遺者の承認または放棄は撤回することができません。
- 遺贈が放棄されたときは、遺言に別段の定めがない場合、相続人にその権利が帰属することになります。
遺贈の放棄の方法
遺贈は単独行為ですので、受遺者が受諾の意思表示をしなくても、遺言の効力は発生し、受遺者には法律上直接に権利が移転します。
受遺者が遺贈の利益を受けたくない場合は、遺贈の放棄をする必要があります。
特定遺贈の場合の放棄
特定遺贈の場合には、時期や方法に制限がありません。受遺者が遺贈義務者に対して遺贈を放棄する旨の意思表示をすれば、遺贈は遺言者の死亡の時に遡り効力を生じなくなります。
後の紛争を避けるためには、書面による放棄の意思表示をされることをお勧め致します。
この意思表示は、詐欺・強迫などによりなされた場合等の極めて例外的な場合を除いて撤回をすることはできません。
なお、債務免除(100万円の債務を免除するなど)の遺贈については、放棄することができないと解されて居ります。
包括遺贈の場合の放棄
包括遺贈の場合は、受遺者は相続人と同一の権利義務を負担することとなるので、相続人同様、包括遺贈のあったことを知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければ単純承認したものとみなされます。